落とし物を拾った
朝、駅までの道でクリアファイルが落ちてた。
ファイルの中には何か書類やらハガキやら入っているのだが、これを拾って、交番に届けてなんやかんややっていると電車に乗り遅れちゃう。
ただでさえギリギリの時間なのに、僕はそんなに良い人でもないし、と自分に言い訳をしながら通り過ぎた。
でも前日の雨で少し書類がファイルの中にあるものの、濡れてしまう。
恐らく確定申告の書類だろう。
あの税務署に行って、税務署の中に入って、中の人達に向かって、
「かくてーい!」と申告するアレだ。
「かっくてい!」や「かくてぃ」でも可。
でも去年だか誰か「カックテール!」と言って追徴課税された人がいたとかいなかったとか。
のアレだ。
踵を返した僕はそのクリアファイルを持ち、交番へと走った。
ちらっとみると男性の名前が書いてある。
どこで落としたことに気づくのかは分からないが、それに気づいた時は恐らく顔面蒼白になるのだろう。
〜税務署にて〜
「私、山本啓二(仮)は、本日、確定申告をしに参りました!」
「不肖、山本啓二、72歳、僭越ながらこの度確定申告をいたすため、ここに参った次第ですが、先ほど駅に着きこちらへ向かっている最中に、喉が乾き、爽健の、あの爽健の美茶を飲もうとサイフを出そうとカバンをまさぐったところ、こちらに提出するはずの書類一式がないことに気づき、家には忘れてない、決して家には忘れてない、というのも、朝出る前にカバンの中をチェックして、また、駅まで歩いている最中もチェックをし、間違いないことは確認しております。」
「ですが、今、ここに着いた私は右手に爽健美茶、左肩にはその書類が入ったカバンを持ち、立っているわけですが、その書類がないわけであります。賢明な方達とお見受けします。そうです、あなた達の今想像している通り、私、山本啓二は駅までのチェックをした際にどうやらその書類をちゃんとカバンにインできず、落としてしまったみたいです。そのこともわからずここへ来た次第ですが、ここまで来た限りは以上のことを申し上げ、私は今一度家へ帰り、交番へ行き、落とした書類が届いていないか確かめることが今私ができる最大の行動だと自負しております。だが、これだけは言わせてください。ここまで来たんです。これだけは言わせてください!」
「かくてーい!」
となってないだろうか、今も分からないから心配である。
すごいお腹が空いていたんだ
すごい、お腹が空いていた。
たまに仕事で料理の写真を扱う時によく起こる。
この日は特に、どう、ということはない。
I Wanna Doってことはない。
少し食べ物のことを考えていたんだな。
ああ、美味しいもの食べたいなあなんて思ってたんだな。
電話が掛かってきて、
「自然薯に必要な予算を、、、」
なんて言うもんだから、
(この人僕に何を言い出すんだろう)なんて考えてたら、
後から、
次年度だってことに気づいたのは、
ここから5行前くらいに分かった人は僕と友だちになってください。
職質を受けたときの憤りを抑える予防法
風邪をひいて、寒い寒い夜の中を、仕事帰りに自転車に乗って、
もう、もう少し、後少しで駅前の駐輪場に着くというところで、
信号待ちをしていたら、パトカーが横切り、
そのすぐ後に女の子が信号無視をしたにも関わらず、
その子はお咎めなしなのに、信号が青に変わって、
あと、ここの信号を通って、あの道通ったら、駐輪場だというのに、
「はーい、ちょっといいですか?」だって
振り返るとおまわりさん。
少し言葉がなまっていたので京都、もしくは関西人ではないのではないか、
と推測するも、
「お兄さん、自転車無灯火で、耳にイヤホンしてますよね?」だって
「だから何ですか」と言ってはみたものの、
「無灯火とイヤホンは道路交通法違反だってご存知ですか」だって
「知ってるけど、無灯火は、もう少しで駐輪場だから、めんどくさいし、消したんです。」と言ったはいいけど、
「違反は5万円以下の罰金なんですよ」だって
そこで少しスイッチ入っちゃって、
「何それ? イヤホンなんて歩いている人もバイクの人も付けてるけど違反じゃないやん」って返したんだけど、
「いや〜自転車の場合違反なんで」だって
「いや、危ないか危なくないかは君も見たらわかるでしょ? 歩いている人も危ないし、なぜ自転車だけ違反になるのかが納得いかない」って言ったものの、
「いや、でも法律で決まってるんでね」だって
こいつ俺のこのカゴの付いた、ブレーキするたびすごい音のなる、ママさえも避けるというこのママチャリに乗っているこの俺を捕まえて、5万円の罰金をとろうというのか、って思ったので
「じゃ、次から気をつけます」と言ったものの、
「分かりました、今回は注意ということでね、すみませんが防犯登録の番号を調べさせてもらってもよろしいですか」だって
こいつマスクしてマフラーをぐるぐる巻きにして、過剰なほどに服を着込みすぎてパンパンになってる俺を捕まえて、気遣いという配慮が欠けているのだろうか、と思ったのだが、
「早く終わらせて」と言ったら、
「すみませんがお名前教えてもらってもいいですか」だって
「まず君が名乗れよ。相手にものをお願いする、たずねるのに初対面でまず名乗らないのは怠慢だ。だから言わない」って言ったら、
「分かりました、それじゃ結構です」だって
いや、名乗りたくないのかい!
ということがあったんですけど、誰か正解を教えてくれませんか。
かわいそうなおっちゃん 6
王達はゲルの中にいた。
突然の王の訪問に遊牧民達は驚きを隠せないでいた。あいにく遊牧民の王は周りの者を連れ立って狩りに興じているらしい。
王は「戻ってくるなら」としばらく待つことにした。
時間はないようであるような、いや、今こうしている時こそ、全てを解決させる方法を思いつかないかと何かきっかけを待っていたにちがいない。
王はゲルの中に座り込み、その膝元を台にして頬杖をついていた。
目の前に出されたソーダ水にも全く手に付けず、ずっと待っていた。
どのくらいたったのだろう、外はすっかり夕焼けに染まっていた。
ソーダ水の気泡が全て無くなる程だろうか、遊牧民の王はようやく帰ってきたのである。
「来ると分かっていたら、こんなに待たせなかったのに。お待たせした」
「それで、何の用ですかな」
まるでイヤミのように聞こえるその言葉は一瞬、王の側近たちの怒りを買いかけたが王がそれを静止するかのように口を開いた。
「遊牧の王よ。私は迷っている。今回の問題を解決する方法はいくらでもあるようにも見えるが、少し事情があってな。一つ浮かんではいるのだが、それに踏み込むことができないでいる。遊牧の王よ、お前には息子がいるか?」
遊牧民の王は王の言葉を聞き終わるとふとゲルの入り口の青年を見やった。
それはとても屈強な男で、聡明な顔立ちをしている。
王はその青年を見ると遊牧民の王がいる方向に向き返り、
「立派な跡継ぎがいるんだな」と言ったその後、一閃、剣を抜き放ち、遊牧民の王の首を切ったのだ。
周りはあまりの突然の出来事に絶句し、動けないでいる。
そこには血しぶきを上げて横たわる遊牧民の王と血の付いた剣をぬぐい一息つく王の姿だけが照らし出されたようだった。
「遊牧の王の息子よ。今からお前がこの遊牧民の王となれ。私はこれから隣りの国に行ってこの前王の首を差し出してくる。これでこの問題は解決するのだ。」
遊牧民の王の息子は立ちつくしたまま、動けずにいる。
「私が憎いか。しかし、これが私の国のやり方だ。今までは違ったのかもしれないが、私がこの国の王なのだ。これからは私の国に来るのなら私のやり方に従ってもらう。お前達が兵を集めようと無駄だ。すでに私の兵達はお前達の兵のいるゲルの周りを火を持って取り囲んでいる。」
苦虫を噛み潰したような表情で王を睨みつけていた遊牧民の王の息子だったが、観念したかのようにひざまづき、
「王の命に従います」と許しを請うたのだ。
王はその言葉に安堵し、大きく息をついた。
「私の国にいるときはこれまで通り好きにするがいい。だが、隣国や私の国の者との諍いは許さない。もし何かある場合は問題になった者を断罪し、詫びなさい。以上だ」
そう言って王はゲルを後にした。
1年の計
3年くらい前にパーマをやめた。
ハゲてきたから? 否
ただ単に飽きたからである。
僕はイメージができないと踏み出さない。
服装や身の回りのものが欲しいと思った時、自分がそれを身につけている(着ている)イメージがわかないと結局買わないことにしている。
イメージができて、買って、じゃあ失敗しないのかといったらそれは別で、失敗したことも数えきれないくらいあるが、それはそれで、自分のイメージが足りないって思うだけで、反省するのである。
パーマに飽きたのはもっと前なんだけど、自分が普通の髪型で、少しでもよく見えるといったイメージができない。ずっと1年くらいもがき続けて、ようやく切ったのである。
イメージが出来たからというわけでもなく、漠然として切ってみたのだ。
今もああでもない、こうでもないと試行錯誤している。
いつもイメージをしていて、あるゴール(髪型)にたどり着く。
そのプロセスを楽しみながら、そのゴールを目指して、少しずつ新しい自分への門戸を開くのである。
もうちょっとサイドを刈り込んで、
もう少しサイドを刈り込んで、
もう少しサイドを刈り込んで、
いくいくはモヒカンを目指そうと思っている。
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かわいそうなおっちゃん 5
王は馬車に揺られながら思案にふけっていた。
まるですべてを遮断するかのように、目を瞑り、誰にも声を掛けられることもなく、1日が過ぎていった。
途中、オアシスを見つけ、休憩することにした。
側近達は王をとてもきれいな水場へ王に口を潤すよう促した。
王は水をすくい口へ含もうとすると、どこからともなく小さな女の子が水を汲もうと、自分の半分くらいもあろうかというバケツを持ち、王の隣りで水を汲み始めた。
側近達はあわてて女の子を止めようとしたが、女の子は何が起こったのか分からず、ただ怯えているだけだった。
そして隣りにいる者が王だと知り、さらに怯え出したのだ。
側近達の大きな声を聞いたのだろうか、その女の子の母親と女の子よりは一回り大きな男の子を引き連れやってきた。
母親は王の姿に驚き、女の子が何か粗相をしたのかと大きな声で叱り、女の子の頬をずっとひっぱたいていた。さらにその父親であろう男がやってきて、母親を止めるのかと思えば、逆に母親より強い調子で、女の子の意識がもうろうとするまで殴り続けるのだ。
王はその姿に顔をしかめ、ついに止めようとしたその時、その女の子の兄であろう男の子が父親から女の子を引き離そうと父親の腕を噛んだ。
父親は驚き、しばらく立ち尽くしたが、王の前で恥をかかされたとでも思ったのか、さらに大きな声で怒り、今度は男の子を力一杯殴り続けたのだ。
王はその姿に辟易し、側近に父親と母親を捕えるよう促した。
男の子は顔中アザだらけになり、女の子も顔を腫らしながらずっと泣いている。
王はこんな親の元で育つより、他のものに育たせた方がこの子達にとっては幸せなのではないのだろうかと思案したが、この子達にも選ぶ権利があり、この子達に決めさせた方が良いのだろうと、子どもたちだけを王の前に呼び寄せ、
「お前達はこの親の元を去りたいか、それともこのまま親の元でずっと生活したいか」と、問いかけた。すると男の子が、
「親の元を去るならもっと前に出来ていました。でも、まだ妹が小さいし、僕もまだまだです。ただ、これだけは決めています。僕はこれからもっともっと強くなって近い将来父親と母親を殺します」
こんな小さな男の子にこんな思いがあるなんて思いもよらなかった。王は心底驚き、男の子の目をじっと見つめていた。
王は捕えたこの子達の両親を王の前へ連れてくるよう命じた。
父親と母親は処罰されるのではないかと恐れ戦き、ずっとうつむいている。
王は後ろ手にしばった縄をほどかせ、子どもたちを連れて帰るよう命じた。
男の子が帰る前、王は呼び止め、忍ばせていた短剣を男の子に渡し、「お前が事を成し遂げたとき、妹と共に私をたずねるがいい。悪いようにはしない。これは私をたずねる時に門番の者に見せるがいい。」
男の子はだまってうなずき、懐に短剣を忍ばせて妹と両親の元へ走っていった。