かわいそうなおっちゃん 9
気がついたらこんな時間になってた。
そういえば何も食べていない。
外食するのも億劫だし家で何かを作るのも億劫だ。それに材料がないときたもんだ。
ゆっくりとソファから立ち上がり、少しばかりの奇跡を信じて冷蔵庫を開けてみたがやはりない。何も食べていないって思い始めたら少し空腹になるもので、人って単純なんだなと改めて考える。再びソファに座り直そうとソファを見遣ったその時、一人で住むには広すぎる空間だなと今更思いはじめる。
妻と娘は先月出て行ってしまった。
それからは会っていないが時々電話で生活費をせびってくる。
同僚に一度妻と娘を見かけたと報告を受けたが、特別何をするわけでもなく聞き流した。
もちろん出て行った理由も知りたいし、居場所を突き止めて連れ帰る衝動もないわけでもないが、何を今さらという自分が、面倒くささも加味して動けずにいた。
先に空腹をなんとかしよう。
それからだ。