レバ刺しを食わせろ

思ったことを間違ったまま書いている

かわいそうなおっちゃん 3

気がついた時はベッドの上だった。

側近の者があまりにも遅いと業を煮やして王のいる2階へ上がったところ、倒れているのを発見し、慌てて城へ連れ戻ったとのこと、鍛冶屋の若い主人はその後に作業場に戻ってきたところを捕えたという。

ただ、鍛冶屋の若い主人は何が起こったのかも分かっておらず、なぜ捕えられたのかも分からずただ、戸惑っているらしい。

王はゆっくり起き上がり、その男のいるところへ案内するよう指示をしたのだが、先ほどの件が頭にあるのか、王が鍛冶屋の若い主人に会うことに反対している。

「捕えられているなら安全ではないか」

王は憤慨し、別の者へ男のいる牢へ案内するよう促したが、誰も王を案内する者はいなかった。

夜半、王は牢番をしている男にいくつかの金貨を渡しその主人のいる場所へ案内させた。

鍛冶屋の若い主人は憔悴しきった様子で、眠れないでいるのだろう、毛布にはくるまっていたが目はずっと見開いたままだった。

「鍛冶屋の主人よ、今一度話をしようではないか」

王はゆっくりとした穏やかな口調で主人を見やりながら言うと、鍛冶屋の若い主人は王に気づき、まるで今にも泣きそうな顔で王に訴えた。

「私は何をしたのでしょうか。私の作業場の近くで何か騒いでいると急いで帰って来ると捕えられました。王に危険を犯した、と。私にはまるで見当もついていません。」

王は何も言わずただ男を見ていた。

「私は帰ってくるまで街の外れの家々をたずね、そこの包丁や金物を研いでいました。その町外れの人たちに聞いてくれれば無実だと言うことが分かります。私は何もしていません」

王は男の話す間、男の奇妙な様子に戸惑っていた。

確かにあの時私と話した男と今、ここにいる鍛冶屋の若い主人は似てはいるが何か違和感を感じる。何か、目の輝きが、私と対峙していたあの男とは全く違っていた。

だとするとあの男は一体誰なのだ?

「わかった。明日牢から出してやろう。私と側近の者達はどうやら勘違いしていたようだ。」

鍛冶屋の若い主人は安堵の表情で王がその場から去るまで、ずっと頭を下げていた。

 

約束した通り、次の日、鍛冶屋の若い主人は釈放された。

ただ、全ての疑念が晴らされたわけではない。

王は側近のものにしばらく鍛冶屋の若い主人の動向に注視するよう命じた。

 

あと3日すればまた遠征に出なければならない。

その間に劇的に解決してくれないだろうか。王は誰の目からもはっきりとわかるような苦悩の表情で帰っていく鍛冶屋の若い主人をただ見つめていた。