レバ刺しを食わせろ

思ったことを間違ったまま書いている

かわいそうなおっちゃん 1

王は悩んでいた。

この頃の、妻である王妃と、私との間に生まれた娘の目に余る理不尽な所業に頭を抱えていた。

周りのものは決して声を大にしては言うまいが、暗に処罰を下して欲しいという願いは私を見つめる目から重々知っていた。

私が遠征に出かけるときは特に目も当てられないという。

彼女達は男娼に入り浸り、近くの酒場で代金を踏み倒し、やりたいようにやっている。

遠征から帰り、開口一番その話を聞くことは、遠征から帰ってきた安堵と疲労よりも大きなものだ。

初めの頃は王がその事を知り、ばつが悪そうにしていた時もあったが今は、もう呼び出しても、来ることもなくなった。

それを見かねた周りのものは進言をしてくるが、全ては王に委ねるの一点張りだ。

どうしろとは言わないが、

「処刑をしてほしい」

そう思っている者は決して少なくはないのだろう。

そんな王に謁見を願っている町の者がいた。

もううんざりだ。

毎日のように王に申し立てる町の者は絶えない。

昨日も酒場の店主が踏み倒された酒代を請求しにやってきた。

酒場で男娼と飲んで、暴れて店の備品が壊されたと支払った金を数えながら言い出す始末。王はそれを聞き請求された酒代より色を付けて何回も支払っている。

王にとって町の者の信頼を得ることも大事なことなのだ。

だからと言って毎日毎日同じような話を聞いているのも正直うんざりだ。

王は深くため息をつきながら謁見を望む町の者を呼び寄せるよう命じた。

男は王をまるで蔑むような表情で見つめている。

酒場の主人でもない、男娼か。

王は何のようだと天を仰ぎながら言ったが、男は何も語らず、王を見つめたまま動こうともしない。

王は怪訝に思い、男にこの場を去るよう促したが、男は一向に動こうともしなかった。

しばらく沈黙が続いた。

それは長くも感じたが、そんなに長くもなかったのだろう。

男は口元を緩ませ何か言うつもりだったのか分からなかったが、少し笑ったような表情で去っていってしまった。

王は悩んでいた。