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レバ刺しを食わせろ

思ったことを間違ったまま書いている

東寺のお壕の匂い問題について

あるある 京都 日常

七代目・茂木庄衛門は六代目の急逝により3ヶ月前に名跡を継いだばかり。
茂木庄衛門が代々営む京都・宇治にある茶葉の店「茂木茶寮」は独特の茶もみ製法で他に類を見ない味わいに仕上がっていることで昔ながらの顧客はもちろん、外国人観光客にも人気の店だ。
現在ある茶葉は故・六代目が、亡くなる以前に最後の茶もみを施した貴重な茶葉である。
それ以後は、七代目となる茂木庄衛門が茶もみを施すことになるのだ。
茂木家の茶もみは一子相伝、長く務める従業員にもその製法を見せない。もちろん現状その製法を知っているのは七代目ただ一人である。
七代目は悩んでいた。まだ齢26才にして名跡を継ぐというプレッシャー、そして一子相伝である茶もみに不安を抱えている。
この日も朝起きて、作業場に一人入り茶もみを繰り返していたのだが、うまくいかない。思わず茶葉を床に叩き付け、仕上がりの悪い茶葉を眺めては、ため息をついていた。


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茂木茶寮 専務取締役の山本裕次郎は気に病んでいた。
彼は五代目から長く務める古株で、茂木茶寮のすべてを熟知していた。茶もみ製法以外は。
いや、茶もみ製法が例え一子相伝である事情であるゆえ、外に対しては「私たちには教えてくれない」と一点張りだったが、実は知っていた。
五代目が加齢による衰えで退く際に、こっそり山本に見せていたのだ。
ただ、知ってはいても、公にやってみせることはできないし、何より、名代である茂木家に心酔していた。
彼は七代目が茶葉がうまくいかないことで悩んでいるのを知っていた。いや、初めからわかっていたというべきか。
しかし一子相伝と伝えられている七代目に対し、自分は実は知っているからアドバイスするということもできない。彼が知っているというのは、もうすでに逝去している五代目との秘密なのだ。急逝した六代目すら事実を知らない。


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七代目はずっと悩んでいた。自分のどこに父である六代目との違いがあるのか。
茶もみは教えられた通りやっている。事実、十代の頃から教えられ、経験を積んできたのだ。「筋がいい」と褒められたこともある。
つい数年前には六代目が急病で長期入院を強いられた時は自分が変わりに茶もみを行い、少し苦味が残るが店に出せるだろうと合格点を出され、一時しのぎで店舗にならべたこともある。
まだ、その時の方が良かった。今は茶もみを施すとくさいような匂いが残る。茶をわかすととても飲めなくなる。
一子相伝である茶もみは、まず、茶葉を特別に作られた床シートに均一方向にまっすぐならべることから始まる。普通なら、大きなざるで手もみしていくのだが、茂木家ではそれを「足」で行う。足で揉み込み、足で全て仕上げてしまう。これにより、絶妙な強めの香りと口に入れた時の甘みが他の店にはできない味わいを作っている−−−−−そう、七代目は水虫だったのだ。

その水虫から生まれる強烈な匂いが茶葉に移り、いやな匂いをかもし出している。山本は知っている。彼が水虫で足の臭いが茶葉と混ざって、まるで、東寺のお壕の藻の臭いの様に放っているということを。

 

ていうくらいくさいです。今の東寺のお壕。

 

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